名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1010号 判決
被告人
鄭永五
外一名
主文
本件控訴は何れも之を棄却する
理由
凡そ証拠の標目は該証拠が如何なるものであるかを認識し得る程度に表示すれば足り必ずしも特定するを要しない。所論の池田忠兵衞の被害上申書に就て看るに原審第一回公判調書の記載に依れば
(一)被害者伊藤壽夫外一名作成の被害届、被害追加上申書及び被害上申書三通
と記載せられてあつて、其文意から看ると右三通の書面は一見伊藤壽夫外一名の合作のように見えるが記録貼綴の証拠から看ると右の中被害上申書一通は池田忠兵衞作成のものであることが明瞭である。即ち右「外一名」とあるは作成者を特定しないものであつて、從つて單に被害上申書と記載した場合と毫も異なるものではない。飜つて公判調書上檢察官請求に係る特定人作成の被害上申書と記載した場合の適否について按ずるに右は理論上「特定」はしないが常識上「如何なるものであるか」については之を判別することが出來るから斯る証拠調の請求は素より適法であつて原審が該請求に基き池田忠兵衞作成の被害書上申書を取調べ之を断罪の資料に供したことは何等の違法がないから此点の論旨は理由がない。